日な日な余波ははなやか歩く

週1~2回くらいのペースで、ここで写真展をやってます。「繰り返し」と「凡庸」は写真と人生の本質です。

巷(ちまた)を撮る。

 

今回はちょっと長めの文章になります。 お付き合い下さい。 

 

 

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「アジェの写真=パリ」と同じく、「荒木経惟の写真=東京」と言っても問題はないだろう。

それは森山大道ホンマタカシでも、同じことが言える。 ほぼ ほぼ。

 

東京の「今」は写真そのものだ。表層が写真になる。

同じことが、京都には当てはまらない。ブランドイメージが邪魔をする。

寺社仏閣をモチーフに、写真の上手下手を問題にするならのなら良いのかもしれない。

しかし借りてきたお題では、自分自身は写らない。

自分という人間を探っていない写真に、何の価値があるのか。

美しいは、人それぞれだ。

 

奈良の写真なら入江泰吉鳥取の写真なら植田正治など、稀にそれをできる人もいる。 

でもそれも、対象と自分の間の距離が写真に「写っている」のがきちんと伝わってくる写真だ。

 

つまり、「写っている」ということは「見えている」ということ、「見えている」ということは「見たい」を持っているということ。このお二方は、そういう人たちだ。

 

それを才能という言葉で簡単に片付けることは、僕にはできない。

写真を他人事にはできなかった、そんな人もたまにはいるものさ、そんな感じだ。

 

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常々、写真に歴史は写らないと思っている。

歴史は物語的に要約される。

歴史は言葉であり、絵巻であり、映像だ。

結論を先に言えば、物語に要約でないものを見るために、写真は撮る価値があると思う。

 

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ロバート・キャパの作品に歴史上のお偉方の軍法会議かなんかを撮った記録写真があったが、表層が見えているだけで、実際何が行われているのかは写真だけではわからない。

タイトルを読んで「ああ、これは何々だ」と、見る側が理解して初めてそこで歴史的記録写真が成立する。

それならば、杉本博司の蝋人形やジオラマの作品と大差はないように思えるし、かえってそっちの方が面白みさえ感じたりする。

それは美術という立ち位置だけではなく、写真の問題としても言える。

 

 

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歴史的な呪縛と現在という京都の二面性。

写真を歴史や観光やロマンのために撮るのか、そこを切り離して、自分の写真を撮っていくのか?

京都人にはなれない僕には、後者のやり方でしか写真を撮ることができない。

僕はそういう一人ぼっちの人なのである。 

 

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話は戻るが、「物語の良さ=作品の価値」ではない。

良質な物語は必要だが、それはきっかけにしか過ぎない。

映画なんかでもみんなネタバレを避けたがるが、それでダメなら、それまでだ、と思う。

古典落語はネタがバレている。でもそのネタをどうしゃべるのか、そこに面白さがある。

話し手の構図の取り方一つ。そこに「人」が現れる。

談志曰く、どうやら人情話の方が価値がある、みたいなことでもなさそうだし。

 

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落語と同じく、写真も構図をどうするかによって、対象は同じでも、その意味はまったく変わってくる。

珍しいを求めても、いつでも簡単に見つかるものではないし、だいたい珍しいだけでは面白さは10分と続かない。

僕らはどうしようもない日常を生きている。

だから撮る対象は、ありふれているものばかり、世間はありふれたもので満ちている。

生も死も、自然も。

本当はみんなそれを知っている。

知っているのに理解する時間と環境を持てないまま生きている、そんな気がする。

 

そんな巷で写真を撮ろうとしているのである。

なぜ自分は写真を撮るのか? 知らずと考えることになるのは当然のことだ。

まあ、答えなど無いのだけど。

 

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