曇天。
カメラの設定を戻さずモノクロのままで撮りはじめる。
岡崎・平安神宮界隈には、たくさん人がいたけど、なんだか写欲が湧かない。早く通り抜けたく思った。今日はダメだなと思った。
逃げるように路地に足を踏み入れると、途端にそれが180度変わった。
さっき見た綺麗な街と、そこに集まる人々。
結果がどうあれ、写真を撮るより他にやりたいことが僕にはないのだなと、思った。
そういう羽目になったのだ、僕の人生は。
才能などなくとも、自己満足だと笑われようと、お金で誤魔化せない人になってしまった。
出かける前にTVで見たドキュメンタリー映画『柄本家のゴドー』。
演出家としての柄本明氏の言葉が、自分の中にじわじわと響く。
今日歩いた8,095歩。
その間に、少しでも自分の中に勇気が湧く瞬間があっただろうか?
たぶん、あった。
台本に書かれたセリフを「口にする」役者、それと写真を撮ろうとする行為は、どこか似ているような気がする。
まず意味有りき、ではない。それどころか、目的もわからない。
でもそれを欲する人々。
それ=夢だとは、僕にはどうしても思えない。