荒木経惟という写真家の存在を知ったのは、20歳の頃。
教育テレビ(現在のETV)で放送された篠山紀信の『近未来写真術』を見たのがきっかけだったと思う。
数年後、『センチメンタルな旅・冬の旅』を購入する。
当初は、写真的な感覚ではなく映画的な感覚で僕はこの本を買ったのだけど、日常の些細な風景が写真になることを、この本は僕に知らしめてくれるきっかけになった。
やっぱり僕もアラーキーズ・チルドレンの一人だったらしい。
1994年初版の『アラーキズム』(作品社)では、写真史に残る写真家の名前を知ることになり、写真を撮る上で写真の歴史を無視できないことを知ることになる。
アラーキーの著書は、僕にとって、写真の歴史を、そして写真そのものを知る「はじまり」の存在だった。
そういうきっかけでの、ウジェーヌ・アジェである。
長い間、僕はこの人の写真を、理屈では受け入れていても、心では理解できない、遠い存在だった。
写真を撮り始めて25年あまり、僕はアジェの撮った写真とアジェという人の存在に初めて共感めいたものを感じている。